自治会・町内会の役員のなり手が少ない。地域活動における事務作業が煩雑。若い世代にも地域活動に入ってほしい――そんな悩みを持つ地域は少なくない。こうした地域の課題解決に向けて、京都市と小田急電鉄(本社・東京都新宿区)が3月20日、「持続可能な地域コミュニティの推進に係る連携協定」を締結。京都市の門川大作市長と小田急電鉄の星野晃司社長が出席し、京都市役所で協定書に署名した。
市民力、地域力、文化力を生かして持続可能な京都のまちの実現に向けた取り組みを推進している京都市と、地域価値創造型企業へのアップデートを経営ビジョンに掲げる小田急電鉄の方向性が一致。地域コミュニティーの活性化に向けてともに取り組むことで、持続可能なまちづくりや国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)の達成を目指す。
連携の柱となるのは、小田急電鉄が開発・提供する自治会・町内会向けSNS「いちのいち」の導入。パソコンやスマートフォンで地域コミュニティーの活動をサポートしようと生まれたシステムで、「いちのいち」には、自治会役員などから会員にデジタル回覧板などの情報が発信でき、会員が投稿・閲覧しやすいのが大きな特色だ。子ども会やシニアサロンなどの地域に実情に応じたコミュニティーづくりを支援する機能、災害時の安否確認や避難所の案内などができる機能もあり、地域住民と自治会役員の情報共有がスムーズにできる利点がある。また、事務作業の効率化や、それらによって生まれた時間を地域活動に充てるなどの効果も期待できる。
小田急電鉄によると今年2月末の時点で、神奈川県や東京都の小田急沿線では約400の自治会と町内会で利用されているという。沿線外では初めての取り組みになる。
京都市では、現在、西京区樫原(かたぎはら)学区で「いちのいち」を試行中。まず同学区を対象に小田急電鉄と連携して普及・活用の実証をモデル的に進めていく。地域の実情やニーズに沿ったICTツール活用に向けて、操作方法や運用に関する説明会・相談会も実施する予定。将来的には、京都市内全域に展開する方針だ。
京都市の門川市長は「地域活動が活発な樫原学区でモデルをつくり、多くの地域で活用していきたいと思います」と新しいツールに期待。星野社長は「いちのいち」が社内事業アイデア公募制度の第1号で企画されたことを明かし、「役員のなり手不足、高齢者の孤立、地域コミュニティの希薄化は全国に共通する問題です。『いちのいち』は持続可能な京都のまちの実現に寄与できると考えています」と力を込めた。